伝えられる期間

子育て

大切な人に何かを伝えられる時間が、あとどれくらい残っているかを考えたことがありますか?
私は、子どもたちと過ごす毎日の中で、そのことをいつも心に留めています。

子どもは、あっという間に大きくなります。
いつも心の片隅で思うのは――
「上の子が家を出て行くまで、あとどれくらい一緒に過ごせるんだろう?」ということです。

子育ては大変でした。
いえ、正直に言えば今も毎日が奮闘です。
それでも、この時間は間違いなく、私の人生で一番幸せな時間になると確信しています。

大切な存在と真剣に向き合い、時にはぶつかり合い、笑い合う。
この子たちがいるから、どんなことも頑張れるし、何をしても楽しい。

私は親として、どんなに未熟でも、子どもより少しは多くの経験を持っています。
だからこそ、その経験を伝えたい。
そして、子育てをする中でずっと変わらない想いがあります。
――「自分は幸せだと思える人になってほしい」ということ。

そのために、これまでたくさんのことを伝えてきました。
私自身、立派な人間でも完璧な人間でもありません。
感情的になって怒鳴ったり、嫌味っぽく言ってしまったり…。
そのせいで、本当に伝えたい想いが届かず、後悔したことも何度もあります。

それでも、向き合おうとして、失敗して、後悔して、反省して、
時には通じ合い、注意し合い、笑い合いながら、
たくさんの「幸せになってほしい」という想いを伝えてきたつもりです。
自己満足かもしれないけれど、それでも伝えずにはいられませんでした。

最近、高校生になった子に「こういうところは直したほうがいいよ」と伝えたとき、思いました。
――こうやって話せる時間も、もう長くはないんだな、と。

毎日一緒に暮らしている今だからこそ、子どもの変化や様子を感じ取れる。
でも私は、何もかもわかる立派な親ではありません。
離れて暮らすようになれば、きっと今よりも子どものことを把握できなくなります。
それは距離の問題だけではなく、成長とともに親の知らない社会と関わる時間が増え、
心の面でも少しずつ親元から離れていくからです。
そんな中で、わかったような顔で注意やアドバイスをすることは、きっとできなくなるでしょう。

そしてもう一つ、今伝えなければならない理由があります。
それは、子どもたちが生きているのは、私たちが育った時代とはまったく違う社会だからです。

私が子どもの頃は、学校の先生や近所の大人、知らない人でさえ、
気になることがあれば注意してくれたり、時には厳しく叱ってくれたりしました。
社会に出ても、職場には厳しい上司や先輩がいて、人としての在り方や社会の中での振る舞いを教えてくれました。

けれど今は、そうした機会が格段に少なくなりました。
「怒らない」「厳しくしない」という風潮の中、
他人が自分について率直に指摘してくれることはほとんどありません。
人は人、自分は自分――そんな空気が色濃くなり、
「この人は駄目だな」と思われたら、「教えてあげよう」ではなく、「もう関わらないでおこう」と距離を置かれてしまうこともあります。

つまり、親や家族以外の誰かが、その人の生き方や欠点について教えてくれる機会が減っているのです。
だからこそ、今、親として伝えられるうちに、しっかりと伝えておきたい。
子どもたちが幸せな人間になるために――。

残された「伝えられる期間」を、私はこれからも大切に過ごしていきたいと思います。

コメント

タイトルとURLをコピーしました